「あ、いえ。ほら、よく言うじゃないですか。困った時はお互い様って」 千紗は、慌ててそう答えた。 矢嶋は、少し考えてから「じゃぁ、藤永さんが困った時は、遠慮無く言ってね」と、笑った。 その笑い方が、マスクをしていないせいか、それとも彼の目があまり開いていないせいか、分からないけれど。 胸がきゅんっとなったのがわかった。 「仕事、だいぶ遅かったんですか? すごく眠そうですけど……まだ寝ていられるなら、早く戻って寝てください」 千紗は、つい動揺を隠すようにまくしたててしまう。