矢嶋が、千紗に「話さなきゃいけないことがある」と伝えた時、絶妙なタイミングて鳴った電話。 それは、登録されていない番号からだった。 その数字の並びを見て、千紗は、思わず硬直してしまう。 ――久志だ。 電話帳から名前を消したからって、1年間、ほとんど毎日見続けた番号は、忘れられないらしい。 昨日の、祥子から聞いた話が蘇ってきて、思わずこぶしを握りしめた。 「出てもいいよ?」 矢嶋は不思議そうにそう言った。