コーヒーを少し、口に運ぶ。

さっきから落ち着こうと、カップを手にしたり、手を握りしめたり。

それでもどうしても、気持ちは落ち着かなかった。

誰にも気づかれないように、小さく息を吐いた。

千紗は、スマホのボタンを押す。

時計は待ち合わせの時間を過ぎていた。

隣りにいた矢嶋は、珍しくずっと黙っていた。

時々、千紗と目が合うと微笑んではくれたけれど。



なぜ二人して喫茶店にいるのか。

それは一本の電話のせいだった。