――ピンポーン。 もう時計は11時を過ぎていた。 昨日遅かったのもあるが、普段忙しい矢嶋だ。 休日はゆっくり寝ているかと思って、チャイムを押すのに躊躇してしまう。 ガタッと部屋の奥のほうで物音がして、玄関のドアが開いた。 「おはよ」 いつもと同じ、優しい笑顔の矢嶋が立っていた。 この笑い方、ほんとうに、ずるい。 千紗は、そう思う。