♢ 次の日、千紗が目を覚ますと、矢嶋の姿はなかった。 その代わりテーブルに1枚のメモが置いてあった。 ――起きたら顔出して。鍵、持ってるから―― 右上がりの、細い綺麗な字。 男の人の荒々しさより、柔らかい雰囲気の字だった。 鍵……。 ああ、そうか。 開けっ放しで出て行くわけにも行かなかったのね。 どこまでも優しくて律儀な人だ。 そう思うと、千紗は、なんだか笑ってしまう。