予定の家賃より一万五千円も高かったけれど、ここに決めたのは理由がある。


この朝日と同じくらい、キラキラしている東京の夜景。

それがとてつもなく魅力的だったのだ。

 
駅まで少し遠かったけれど、近くの公園を抜けていく朝の時間が、千紗は好きだった。

おかげで、節約のために自炊は増えたし、余計なものも買わなくなったのだから、一石二鳥かもしれない。


ベッドに腰掛けてストッキングを履きながら、壁にかかった時計を見上げた。

もう針は、七時半を指している。


 
「ああっ、急がなきゃ……」



慌ててハンカチを出そうとして、ふと、チェストの上に伏せてある写真立てが目に入ってくる。

一瞬。

そこに映っている人を思い出して、千紗の胸はつきんっとした。