「大したことじゃないわよ。事務仕事の手際も、人の観察力もあるって聞いたから。典型的な尽くすタイプだって、ね」


褒められているのか、けなされているのか、わからない。


「誰に聞いたんですか? 総務の課長ですか?」

「別に誰だっていいじゃない。あなたが仕事をしっかりやってくれたら、あたしはそれで満足。総務だろうが、営業だろうが、きちんとやるのには変わらないでしょ」


彼女の、気迫と目線に、うまく言いくるめられそうになる。


「食べないの? 美味しいわよ」


彼女は、まるで千紗が食欲のないことまで見透かすかのように、ステーキを口にした。