「わぁ、見てください! 魚が泳いでますよっ」


千紗は思わず指をさして子供のようにはしゃいでしまう。


「矢嶋さん、ほら、見て」


振り返ると、彼は笑いを我慢しているようだった。


「……はしゃぎすぎですか?」

 
千紗は、周りを見回しながらそう言った。

だれもこっちのことなんか気にしてはいなそうだったけれど。

よく考えたら、水族館なんだから魚が泳いでいて当たり前だ。


「いや、千紗ちゃん、ほんと可愛いなって思って」


矢嶋はそう言いながら、まだ笑いを我慢している。

きっとあの顔は、またワンコ扱いしているんだろう。

尻尾ふって喜んでる、って思われてるのかな。

千紗は見透かされているようでちょっと悔しくなった。