「おまちどうさま。佐伯スペシャルです」 目の前に差し出された瞬間、ふわっと花の甘い香りが漂った。 それにティーカップの中は、綺麗な赤い夕陽でも浮いているような鮮やかさだ。 一口飲んで、矢嶋は「やっぱり佐伯さんの入れる紅茶には勝てないや」と呟いた。 千紗もゆっくり口に運ぶ。 口の近くにカップを寄せただけなのに、香りがはっきりと伝わってくる。 しかも、口の中に含んでも、その香りは、甘い紅茶の味の邪魔にならないのだ。