名もなき街に帰ってくると懐かしい匂いがした。腐った肉と血とゴミの匂い。首都に行ってから自分がどんなに劣悪な環境で暮らしていたかよくわかった。


 「とりあえず……ミラベルさんと出会ったところに行きましょうか」

 
 ロムスはそういうと孤児院に向かって歩きはじめた。その後ろで私は嫌な予感を感じていた。孤児院…行ってもいいのかな。


 「ミラベルさん?」


 「なんでもない。行こう」


 とりあえず気にすることはやめた。あくまでも予感は予感だ。それが良い予感であろうとも確かなものじゃない……だから、大丈夫。