「僕じゃ……刺せないんです。あの人は」


 ロムスがすくっと立ち上がった。そして歩きはじめる。どうして刺せないんだろう。どうして殺せないんだろう。それほどまでにあの人は強いのかな。


 「もう少し歩いてから休みましょう。ここらへんで寝ると朝になったら骨ですし」


 「なにかいるの?」


 「獣ですよ」


 そういえばそこら中に足跡がある。ほんとロムスは何でも知ってるんだな。