「健君?」


私が声をかけても何も言わず俯いている。


「気分悪い?何処か座ろうか」

「大丈夫……です」

「本当に?」


私が健君の顔を覗き込むと、健君の顔は涙で濡れ歪んでいた。
口元に力を入れ声を殺して泣いていた。


私は健君の腕を掴んで改札口を出て駅裏のロータリーのベンチに健君を座らせた。


私も健君の隣に座り、健君の背中をさすった。
私が淋しい時に、学の温もりを感じ一人じゃないと感じたように、
健君に少しでも一人じゃないんだと感じて欲しかった。


「椿さん」

「ん?」


健君はゆっくり顔を上げ「すみません」と口角を上げ、私の後ろに視線を向けた。


え?

私が振り向いた時に、琥珀色の瞳が優しく弧を描き「久しぶり」と言う声と同時に意識が飛んだ。