「キョウと瑛の奴、また、やってるのか。懲りない奴らだな。」

そう言いながら、生徒の前だというのに、煙草を吸い、悠々としている先生は、『高階相馬【たかしなそうま】』。

『高階センセイ』は、『氷室センセイ』の中学時代からの同級生で『大親友』らしい。

花輪さんが、高階センセイに、

「先生!!そんなこと言ってないで、早く止めて下さい!!」

必死の形相で訴えた。

だが、高階センセイの答えは、

「悪いけど、あの中に入るのは無理だよ。俺、殺されちまうよ。」

そう言って、肩をすくめると、にっこり笑った。

その『笑顔』が『あの人』と重なる。

私は、高階センセイにドキドキしていた。

すると、花輪さんは、

「先生!!それでも、『男』なんですか!?情けない人ですね!!」

情け容赦なく、ピシリッとそう言った。

高階センセイは、

「情けなくて結構。俺は『面倒』に巻き込まれるのはゴメンだ。」

そう言うと、白衣をヒラリッとひるがえし、化学室のほうへと消えて行った。

「何て、『無責任極まりない先生』なの!!」

花輪さんは、憤慨していた。

私はというと、実は、『初恋のお兄ちゃん』が高階センセイではないかと思っていたのだった。