奏で桜

そして僕はこの言葉を彼女の耳元に
そっと置くように囁いた。


彼女は不意をつかれたからなのか、
真実が露呈されたからなのか、
兎にも角にも、驚きの表情を
隠しきれないでいた。



「…貴女が、外の世界に
行きたいと強く願っていることは
事実です。

しかし、それ以上に
貴女は、孤独になることを
恐れているのではないですか?
だから行きたくても
行くことができない。

なんせ、吸血鬼が〝たかが一人〟
外の世界に行ったところで出来ること
なんて限られていますからね。


…違いますか?」


「…。」


風も吹かないのに、寝室のカーテンが
微かに揺れた、そんな気がした。



その中で彼女は掠れた声で
〝そうよ〟とたしかに呟いたのだ。