僕は結局、そのまま何も言うことが
ないまま、夜の挨拶だけ済ませ、
部屋を出た。


…最後に見た、彼女の表情を僕は
もう思い出せずにいた。
…あれは本当に〝彼女〟
だったのだろうか…?
それすらも疑問に思えるほどに
空っぽな表情だったのだ。
そんな彼女を見て、僕は
僕の中にあるもやもやが具現化し、
ある確固たる〝覚悟の結晶〟に
なっていくのを感じられた。


ーそして、僕は翌日から行動を
開始したのだ。



そう、全ては…
〝彼女〟を取り戻すがために…。


〝彼女〟の奏でるピアノを…
もう一度聴きたいがために…だ。