奏で桜

僕は少し間を空けて
〝はい〟と返事をした。



それから、僕は思いつく限り
外の世界の話をした。
外の世界には、目的地まで勝手に
連れてってくれる乗り物があること、
天に届きそうなほどに高い
建造物があること、
何百もの人が蠢くように広がる
群衆が街にあること、

…などと、色々なことを話した。
彼女は楽しそうに聞いていた。
それは何もこの日だけの
ことではない。
彼女は毎回、僕がこの話題に
触れる度に楽しそうに聞くのだ。


ーしかし、それと同時に
その話題に触れる度に彼女は
瞳の奥に儚げな闇を放つ。