彼の目は次第に穏やかなものに
なっていった。どうやら一先ずは
逃れることができたようだ。
ー私はほっと胸を撫で下ろし
バツが悪そうに今度はこう
言葉を続ける。



「…アル。これ、本当にアルのために
作ったの。だから…良かったら…
あの…食べてくれる?」


私は上手く声が出せなかった。
先ほどまではあんなにも饒舌に
話せていたのに、急にふと、
なぜかどきどきしたからだ。


〝いただきます〟

彼は少し間をおいてから話したが、
黙って一口目、二口目と、食べ続ける。