…一方その頃。




ここは深い霧の森を抜けた
湖のほとり。
そこに霧はかかっていなく、
月光が真っ直ぐに水面に反射して
同じくゆらゆらと水面で揺れる
〝二人〟を照らしていた。

一人は黒髪の執事服の若い男性。
もう一人は先ほどの貴婦人と
同じ髪色をした薄いブロンドヘアの
〝お嬢様〟だ。



「…ここまで来れば一先ず安心
ですね。少し休憩を取りましょう。
この先にホテルを手配しております。
そこまで行けばもう心配することは
ないでしょう。
大丈夫ですか、お嬢さー?」


若い執事はそこまで言いかけたところで
言葉を止めてしまった。
それはお嬢様と呼ばれる女性が
いきなり飛びかかってきたから
である。
そしてお嬢様は若い執事をぎゅうっと
抱きしめた。