「…お嬢様。教養の範囲に
ございます。」


「教養にしては、厳しいことばかり
言うのね。ーねぇ、アル?
私は、自由を手に入れるために
屋敷を出たのよ。
外の世界に出て、小鳥のように
自由気ままに暮らすために
こっちに来たの。
それなのに、なんで私はずっと
この狭い空間の中で
閉じ込められているの?
これじゃあ、〝あの頃〟と全く
変わらないじゃない。
そうでしょう?」


「…ならば、また屋敷
に戻られますか?」


そこまで言うと彼女は
黙ってしまった。
僕にはわかっていた。
この言葉をぶつけると
彼女が沈黙してしまうことを。