奏で桜

「ティアナちゃん?」




ハッとなって気づくと目と鼻の先に
ヒイロの姿が見えた。

どうやらお見舞いはもう終わったようだ。



「どうかした?」


彼女が問いかけてきたので私は、
〝なんでもない〟と小さく返事をした。




「アルト君…顔色良くなってきてたよ。
熱も下がってきてたし、あと数日後には
退院できるってさ。」


彼女は私の横に座るやいなや
聞いてもいないのに状況報告をしてきた。
彼女の話し方から推察するに、どうやら
あいつは目を覚ましているようだ。




「…そう。」


「…会わなくていいの?」


私が無愛想にしていると、
彼女はまた問いかけた。



その問いかけは私が今一番言われたくない言葉
と聞きたくない言葉を孕んでいた。