【完】『ふりさけみれば』


これが。

お菓子であったり、あるいは夏場などは前の日に近所からもらったという新鮮な野菜や果物、さらには時期が合えば自家用に大量に漬けた真鱈の卵の醤油漬けなども来る。

なので。

ほとんどのスタッフや共演者は土産の効果もあってか、

「兵藤さんは気配りの人だからねぇ」

と、おおむね高い評価を得ていたようである。

が。

当の一慶本人は、

「あれでどこまで喜んどるか、本心なんか分からん」

と突き放したような言い方をした。

聞いていたみなみは不愉快は感じなかったが、

(醒めてるなぁ)

とは感じたらしかった。