【完】『ふりさけみれば』


そこには吉岡はるかという、一慶の担当で顔見知りの編集者がいた。

「少し遅れても大丈夫ですよ」

「…どうしてですか?」

「あ、橘さんは知らないんですね」

「?」

そうすると吉岡は、

「京都には髪の毛一本遅れて行くってしきたりがあるんです」

「髪の毛一本?」

みなみはさらに不思議そうな顔をした。