【完】『ふりさけみれば』


他方で。

東京のみなみはみなみで、ニュースセンターの仕事から、単独でのロケの仕事が増えた。

どこへ行っても、

「みなみちゃん、おしあわせに」

などと声をかけられ、人形町でロケをしていたときなどは近所の総菜屋から、

「これ持ってきな」

と、赤飯の折詰をもらったことすらあった。

とみに。

みなみが印象的であったのは、麻布十番をロケで歩いていた際に老婆から、

「この頃は詐欺だの人殺しだの暗い事件ばっかりだったけど、あんたのおかげで少し気持ちが明るくなったよ」

と、お礼にと豆源のおかきを差し入れでもらったことがあって、

「私のみたいなニュースでも、笑顔になってる人がいるんだって」

と一慶に手紙で書き送ったほどである。

これには一慶から、

「他人の恋愛でも世の中が明るくなるなら、それだけで値打ちはあったってことやね」

という返事が来て、みなみは値打ちという一慶らしいいい回しが気に入ったのか、

「これ値打ちあるよね」

などとロケで使ったりしたことがあった。