【完】『ふりさけみれば』


また。

全く一慶がタバコを吸わないのも、みなみは好ましかった。

普通、作家なら吸いそうであろう。

が、

「吸ったことはあるけど、何かいつの間にか吸わんくなっとった」

との由で、気がついたときにはタバコを吸わなくなっていたらしい。

賭け事も、しない。

これには逸話があって、

「うちの造船屋、何か知らんけど麻雀だの競馬だの、みんな好きやったらしくて」

といい、一慶は一切ギャンブルをしない。

「うちは貧乏やったから、ファミコンもしたことなくて」

というのが定番の話で、ほとんど興味もなかったらしかった。

酒は飲めなくもないが、進んで飲み歩くようなことも積極的にはしたがらない。

風変わりな人間、といった方が正しいかもしれない。

つまり、

──口が悪い以外は好青年やで。

といった力の見立ては、あながち嘘でもなかったらしい。