その日、桐山は学校に来なかった。


もしかして好きな人に会いにいったりしてるんだろうか。


それとも美羽と気まずかったからかな。




いろんな理由を考えたけど、どれも自分の心を晴らす言い訳にはならなかった。



「おーい、松永。」


「はい?」



放課後になり、帰り支度を整えていると、なぜか先生に手招きで呼ばれた。



「何ですか?」


「お前、放課後空いてる?」


「空いてますけど…」


「じゃあ日直の仕事、今日だけやってくれない?」


「は!なんで!!だって今日の日直は…」



黒板の端を見てハッとなった。



『桐山 景』



「…………」


「お前が一番日直の仕事丁寧にやってたんだって。

ほら、これやるから。」



そう言われて、差し出されたのは小さなキャンディーひとつ。



「ちょ、先生!?」


「じゃ、会議あるから!」



キャンディーを置いて先生は逃げていった。


これじゃあやるしかないし…。




私は仕方なくカバンを自分の机の上に置き、美羽たちに先に帰ってもらった。