「もぉ全部勝手に食べていいから。早くドア閉めてよっ」
あたしは顎を動かして、早く向こうへ行くよう湊に催促した。
「勝手に食えば文句言うし、聞いてもキレるし……ったく、わがままなやつ」
ちょっと待って。
アンタにわがままって言われたら、あたしもおしまいですけど。
――バタンッ。
湊は、部屋のドアを勢いよく閉めていった。
もう少し静かに閉めてよ……もう。
「もしもし?ごめんなさい、先輩」
“どした?なんかあった?”
「なんでもないです。ホントに」
“結雨さぁ……なんか俺に隠してない?”
「えっ!?い、いや……何も……」
湊と同居してますなんて……先輩に言えるわけない。
彼氏からしたら、彼女が他の男と一緒に住んでるなんて、絶対にいい気はしないよね?
先輩にバレないように気をつけなきゃ。
「先輩、あのぉ……」
“ん?”
「次、部活いつ休みですか?」
“えーと、いつだっけな。次の休み、どっか行く?”
あたしがデートに誘おうとしてること、気づいてくれたのかな。
先に言ってくれるところが、ホント優しい。
「行きたいですっ」
“わかった。行きたいところ考えといて?”
「はいっ」
“結雨”
「はい?」
“好きだよ”
先輩のその一言で、あたしは一瞬で体中が熱くなる。
「は、はい……」
……あたしのバカ。
そこは、“あたしも好きです”って言うべきじゃん。
好きなのに。
どうしていつも、うまく想いを伝えられないんだろう。
“おやすみ、結雨”
「おやすみなさい……先輩」


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
