――バタンッ。
自分の部屋のドアを閉めて、あたしは電話に出た。
「も、もしもしっ」
“あ、結雨?”
「はいっ……ハァ、ハァ……」
あたしは胸に手をあてながら、乱れた呼吸を整える。
“どした?なんか息切れてるけど”
湊のせいだ。
湊があんなことするから。
「な、何でもないですよぉ~へへっ」
湊のバカ。
“いま何してた?”
「えっと……テレビ観てましたっ」
……よかった。
先輩、今日のことは特に気にしてないみたい。
キスされそうになって、恥ずかしくて顔をそらしちゃったから。
先輩のこと傷つけたかもって、
嫌われたらどうしようって……ホントはちょっと心配だった。
――バンッ。
いきなり部屋のドアが勢いよく開いて、あたしは驚く。
部屋の入口に、無表情で立っている湊。
「おい、残ってる菓子、全部食っていいか?」
あたしは咄嗟にケータイの送話口を手で押さえる。
「ちょっと!バカなの?先輩に聞こえたらどーすんのよっ」
あたしは小声で湊に怒る。
大声でキレたいところだけど、電話の向こうの先輩に聞こえたら終わりだ。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
