「じゃあ……もう少しだけね?」
あたしがあきれたように言うと、湊は眠そうな声でつぶやく。
「あと1時間」
「バカなの?普通そこは“あと5分”とかせいぜい10分とかでしょ?1時間て……遅刻したらどぉすんのよ」
「今日文化祭だし。ちょっとくらい遅刻しても平気だろ」
「全然よくないけど?」
あたし一応、文化祭実行委員なんですけど……。
「それより、どぉして隣で寝てんのよ?」
あたしのベッドの下には、ちゃんと湊の布団が敷いてあるのに。
「……寒かったから」
「ふ~ん、ホントに~?」
「一緒に寝たほうが、おまえも安心すんだろ?」
「いや……いろんな意味で安心できないけどね」
「なんか言ったか?」
「おじさんとの約束、忘れたの?」
お母さんが入院している間、家にひとりぼっちのあたしを心配して、
夜は湊があたしの部屋に来てくれている。
ただし、別々に寝ること。
湊はあたしに指一本、触れてはいけない。
それがおじさんと湊の間で交わされた約束らしい。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
