湊は、あたしの手を優しく握りしめた。



「俺がいる。いつも、これからもずっと……結雨のそばにいる」



あの日の記憶が、頭をよぎる。



10年も前の記憶だけど、いまでもハッキリと覚えてる。



湊の家のベランダで。



『湊ちゃん』



あたしのまだ小さな手で、湊の小さな震える手を握りしめて。



『湊ちゃんには、結雨がついてるよ』



湊の言葉で、あの日のことを思いだした――。



すると、湊は雨空を見上げてつぶやく。



「俺も10年前と違って大人になっただろ?」



湊も、あの日を……。



あたしと同じ記憶を思いだしていたんだね。



いつの間にか、あたしの手のほうが小さくなって。



その頼もしくて大きな手に、何度も助けられてきた。



「ありがとう……湊」



あたしは湊の手をぎゅっと握り返して、泣きながら微笑んだ――。