病院を出ると、空から雨が降りだしていた。
ここしばらく蒸し暑い日が続いていたけど、夏の終わりを静かに告げるような優しい9月の雨。
「……ううっ……っく……」
雨にうたれて、泣きながら歩いていく。
――少し前に、お母さんと約束をした。
『ねぇ、結雨。今日は二度と戻ってこないから』
きっと……守れない約束。
『お母さんが結雨のそばからいなくなっても、長い時間苦しんでほしくないの。悲しい思いさせてごめんね。でも泣いてばかりじゃなくて、笑うことも忘れないで?』
お母さんのために、うなずいた。
お母さんがこれ以上、不安にならないように。
お母さんを心配させないために。
だけどね、いまだってこんなに苦しいんだよ……?
お母さんが死んじゃうなんて、信じたくないんだよ。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
