……小学生のとき、あたしは何も知らなかった。
だから最後まで、お父さんに何も伝えられなかった。
大好きだよって。
ありがとうって。
伝えたい言葉はたくさんあったはずなのに、
あたしは何も言えないまま、お父さんは死んでしまった。
心の傷は、決して消えることはなかった。
あたしはまた後悔するところだった。
あのときよりも、ずっと。
お母さんを傷つけてしまった分、自分を許せなかったと思う。
このまま何も知らずに時間が流れていたらと思うと、
すごく怖かった。
悲しい罪を重ねるだけだった。
湊は、そんなあたしをそばで見ていて、
本当につらかったと思う。
何も知らずにお母さんを傷つけるあたしに、本当のことも言えなくて。
あとで知ることになるあたしの、後悔の大きさを考えて。
あたしのために、湊はいままでたくさん悩んで胸を痛めていたんだと思う。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
