いまにも泣きそうなあたしとは反対に、おじさんは冷静な様子で言った。
「結雨ちゃん、大丈夫。落ちついて」
そのとき、病院の駐車場に車を止めていたくぼっちがやってきた。
「どうも、担任の久保寺です」
「あ、はい……湊たちがいつもお世話になってます。先生まで、すみません」
「いえ、結雨のお母さんは……」
「……いま病室で休んでいます。あの、申し訳ないんですが、今日のところは子供たちを連れて帰ってもらえませんか?」
それを聞いて、あたしはおじさんの腕をつかんだ。
「どぉして?お母さんに会わせてよ」
「結雨ちゃん、大丈夫だから。家で待っていてくれないか」
どうして……?
なんか、おかしい。
大丈夫っていうなら、なんでお母さんに会わせてくれないの?
「また改めて先生のほうにもご連絡いたしますので……すみません。子供たちをよろしくお願いします」
「はい。わかりました」
おじさんはくぼっちに軽く頭を下げたあと、
あたしたちをその場に残して、歩いていってしまう。
「待って……」
おじさんのあとを追いかけようとすると、
湊はあたしの手をつかんで行かせてくれなかった。
「湊……離してよっ」
どうして行かせてくれないの?


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
