「結雨ちゃん?」
頭の上から声が聞こえて、机に突っ伏していたあたしは顔を上げる。
「あれ?奈乃……琥都と帰ったんじゃなかったの?」
「忘れ物しちゃって取りに来たの。結雨ちゃんこそ、机に突っ伏してどぉしたの?」
あたしは恥ずかしげにうつむいて頭をかく。
「二階堂先輩といると、ドキドキしちゃって……」
「あ、彼氏来てたの?」
あたしは小さくうなずいた。
「ドキドキしすぎて、疲れたぁ」
「ふふっ。そんなに?」
「うん……奈乃は琥都といるとき、ドキドキしないの?」
あたしが奈乃を見つめると、奈乃は優しく微笑んだ。
「ドキドキっていうより、安心感かな。もう付き合って1年経つからね」
あたしも時間が過ぎれば
この胸のドキドキも
安心感に変わっていくのかな?
「結雨ちゃんは、湊くんといる時のほうが自然でいられるでしょ」
「え?」
「見てるとそんな感じがする。先輩の前だと緊張しちゃうの?」
「……湊といる時のあたしのままじゃ、きっと先輩に嫌われちゃう」
「そんなことないと思うけどなぁ」
可愛く見られたいと思うと、つい緊張しちゃう。
本当の自分を知られたら、先輩に嫌われちゃうかもしれないから。
だから先輩と一緒にいると、自然と演じてしまう。
無理してでも頑張っちゃう。
でも、これが……恋でしょ?


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
