「いきなりそっち系の質問かよ~。おまえセンスあるね~。うぇーい」
くぼっち先生は、扇原くんの席まで歩いていき、扇原くんとハイタッチをした。
なにこのテンション……。
「結婚は残念ながらまだしてないけど、高校時代から付き合ってる彼女がいるよ」
先生の恋愛話に、扇原くんは「ぴいーっ」と指笛を吹いて盛り上げる。
「どーも、どーも。ところで指笛うまいな」
そう言いながら先生は、教卓の前に戻ってきた。
「えー、ところでだ。みんなに聞いて欲しいことがある」
先生は真剣な表情で言った。
「奇跡が起こったんだ」
奇跡……?
「実はな、先生はこの北十字高校の卒業生なんだ」
……へぇ。
あたしの後ろの席に座っている浦中くんが、突然吹きだして笑う。
「ぶっ……マジで、どーでもいいわ」
「おいおい、うそだろ。みんなシーンとしちゃってさぁ。もっと驚いてくれよ。自分の母校で先生が出来るなんて、奇跡だろ?」
「ふふっ。よかったね、おめでとっ」
そう大きな声であたしが言うと、先生は満面の笑みであたしに向かって親指を立てた。
「ありがとうっ!」
この人……先生っぽくないけど、大丈夫かな。
でも、なんだか楽しいクラスになりそう。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
