「ねぇ、湊ってばぁ」
階段をどんどん上にあがっていき、屋上に続くドアの手前で、湊は立ち止まった。
「こんな場所に連れてきて、なんなの?」
「いいから、そこ座れ」
あたしは湊に言われるがまま、階段のいちばん上に座った。
「手ぇ、出せ」
「手?右手?それとも左手?」
湊はあたしの隣に座ると、あたしの左手を掴んだ。
浴衣の袖口から、絆創膏を取り出した湊は、あたしの左手の親指を見つめる。
「ホント、不器用だよな」
呆れたようにつぶやいた湊は、あたしの親指の小さな切り傷に、絆創膏を貼ってくれた。
野菜を切ってるときに、ほんのちょっと包丁で切ってしまっただけ。
「よく気づいたね。あたし、すっかり忘れてたのに」
「どんだけ鈍いんだよ」
「たいしたことないもん」
「あっそ。せっかく保健室まで行って絆創膏もらってきてやったのに」
ため息をこぼした湊を見つめて、あたしはニコッと微笑む。
「なんだよ?」
「めずらしく優しいなーって思って」
「あ?いつも優しいの間違いだろーが」
湊はあたしの頬を、ぎゅっとつねる。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
