あの頃は、ひとりぼっちだったかもしれない。
でもいまは、
あたしたちがいること、忘れないで。
忘れないで……奈乃。
あたしの隣に座っている湊が、遠くを見つめたままつぶやく。
「つらい過去があると臆病になる気持ち、俺もわからなくねぇよ」
湊……もしかして、お母さんのこと思い出して……。
「けどな、もしまたあいつらと会ったとしても堂々としてろ。おまえは何も悪くねぇんだから」
「……っ……湊くん……」
「怖がんな。俺たちがついてっから」
湊の言葉に、奈乃は泣きながら何度もうなずく。
「それと、俺の経験上……」
湊は、奈乃のほうに顔を向ける。
「心の傷は、いつか治るから。心配すんな」
湊……。
お母さんのこと、もう平気なの……?
「時間はかかっても、そばにいてくれるヤツが必ず癒してくれる」
あたしを見る湊の柔らかな眼差しに、胸がいっぱいになった。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
