奈乃は、あたしから視線をそらす。
「でも、あのノート見たら……結雨ちゃんだって奈乃のこと、おかしいって思うよ、きっと」
自分を傷つける人間の顔を浮かべて、
“消えろ”という文字を数え切れないほど書いて。
奈乃は、頭の中で
何度消したいと願っただろう。
いじめる人間たちも。
傷つけられた記憶も。
「あたしは、奈乃がおかしいなんて思わない」
そうやって奈乃は、
壊れそうな心を、自分なりに必死に守ってたんだと思うから。
その行動が、正しいか間違ってたかなんて、
あたしには重要じゃない。
人が何て言おうと、あたしには関係ない。
あたしにとって大事なのは、
心に深い傷を負った奈乃が、
どうしたら、その傷を治していけるかなって。
どうしたら、癒してあげられるのかなって。
「大丈夫だよ。奈乃はいまも優しい心のままだから」
「結雨ちゃん……」
いままで、奈乃の過去は知らなかった。
でも、いまの奈乃がどんな子かって、あたしはちゃんと知ってる。
いじめられて、死にたいくらい苦しんで。
それでも頑張って生きてきて。
傷は負ったけど、壊れてなんかない。
優しい心のままだよ。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
