「あの頃のこと、忘れたいのに……もぉ全部忘れたい……っ」
うつむく奈乃は、両手で顔を覆う。
「もう二度と会いたくない人たちなのに、どうして会っちゃうのかな……」
あの人たちに会っただけで、
奈乃はこの場所に来てしまうくらい、心に深い傷を負っていた。
当時、どれほど奈乃が酷いいじめに遭っていたのか。
想像するだけでも、つらくて。
胸が引き裂かれるような想いだった。
「どうして、ひとりで耐えてたの?誰も助けてくれなかったの?」
あたしが奈乃の横顔を見つめながら訊くと、
奈乃は悲しげな瞳で遠くを見つめたまま、小さくうなずいた。
「いじめられてる子を助けたら、今度は自分がいじめられるって……周りはみんなそう思ってたはず」
奈乃は、細い声を震わせる。
「学校で信じられる人なんて、ひとりもいなかった」


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
