「でも奈乃は、昔のことあんまり話したがらないし、詳しくは知らないんだ」
琥都はつらそうな表情で答えた。
俺に抱かれている結雨が、小さな声でつぶやく。
「もしかして奈乃……ヘンなこと考えてないよね……?」
「バカ言うな」
俺は、結雨の肩を強く掴んだ。
「だって、奈乃の様子明らかにおかしかったのに……気づいてたのにあたし……」
「結雨、大丈夫だから」
「早く見つけなきゃ……奈乃のこと見つけてあげなきゃ……」
結雨は、俺の胸に顔を押しあてる。
泣くなよ……結雨……。
泣くな……。
絶対、見つかるから。
俺たちが見つけてやんなきゃ。
「もしかして、最初から間違ってたのかも」
ボソッとつぶやいた琥都に、俺は視線を向ける。
「奈乃は、どこにも行ってない」
え……?
「それ、どういう意味?」
俺の質問に答える間もなく、琥都は道路のほうに向かって走り出した。
「おいっ、待てよ!琥都っ」
起き上がって叫んだ快の声にも振り向きもせず、琥都は走っていってしまう。
奈乃は、どこにも行ってない……?
どういうことだ?
俺ら3人も、すぐに琥都のあとを追いかけた。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
