「ごめんね。具合悪くなっちゃったから、今日は先に帰ってもいい?」
そう小さな声で言った奈乃の手を、琥都はシッカリと握りしめていた。
「大丈夫?奈乃……」
「うん、平気。ごめんね、結雨ちゃん」
「あたしも帰るっ。お母さんに頼まれてた用事思い出したからさっ」
結雨が奈乃のために嘘をついたことは、すぐにわかった。
「そーだな。今日はもう帰ろーぜ」
俺が明るく言うと、奈乃はもう一度「ごめんね」とみんなに謝った。
カラオケ店をあとにした俺たちは、途中の道でそれぞれ別れた。
ふたりきりになった俺と結雨は、歩道を並んで歩いていく。
「奈乃……大丈夫かな?」
結雨は心配そうな表情でつぶやく。
「すぐ元気になるだろ」
「だといいけど……」
奈乃のことは、琥都が送っていった。
「琥都もいるし、そんな心配すんなよ」
「でも……」
俺は結雨の手を握りしめる。
「おまえまで元気なくなって、どーすんだよ」


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
