ケンカばかりしていた琥都を、いまの優しい琥都に変えたのが奈乃だったなんて、
全然知らなかった。
「ただ、奈乃のことになると、琥都は周りが見えなくなるからな」
そう言って快は、少しあきれたような表情を見せる。
でも、琥都の気持ちもわかる。
俺だって、結雨のことをもし傷つけるやつがいたら我慢できねぇよ。
なんだってやる。
結雨を守るためなら、なんだってする。
「琥都は、奈乃ことホントに大事にしてるもんね」
そう言って結雨は、快と一緒に破片を集めようと床にしゃがみ込んだ。
破片に手を伸ばそうとした結雨の手を、俺は咄嗟に掴む。
「なに?湊……」
「危ねぇから触んな」
俺は結雨の体を押し退けて、快と一緒に床に散らばった破片を拾い集める。
「おまえはドジだから、ケガするだろ」
「なっ、ドジは余計ですけど」
結雨は不満そうに、口を尖らせた。
「フッ……」
吹きだして笑う快に、俺は目を細める。
「なんだよ?」
「いやいや。微笑ましいな~と思ってさ」
「笑うな」
「湊も結雨のこと、ちゃんと大事にしてるもんな~?」
「うるせーよ、黙れ」
俺は恥ずかしさを隠すようにうつむいて、必死に破片を拾い集める。
「それにしても、あの人たち嫌な感じだったよね?中学の頃、奈乃になにがあったのかなぁ?」
そう言って結雨は、ため息をこぼした。
「俺も知らないんだよね」
奈乃に昔何があったのかは、快も知らないらしい。
そのとき、琥都と奈乃が部屋に戻ってきた。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
