床に倒れ込んだ男を睨みつけると、後ろから琥都が俺の肩を掴む。
「湊、コイツは俺がやる」
そう言って琥都は、床にしゃがみこんだ。
「早く立てよ」
琥都が床に倒れたままの男に向かって言うと、そばに立っていたチャラ男が小さな声で言った。
「もしかして……浦中……?」
琥都が顔を上げた瞬間、チャラ男の顔から笑顔が消えた。
琥都と知り合いなのか……?
「誰?おまえ」
琥都のほうは知らないようだけど、チャラ男は琥都を知っているみたいだ。
「浦中……浦中琥都だろ……?や、やべぇよ。早く立てって」
急に焦り出した様子のチャラ男は、床に倒れている男を無理やり起こして、部屋から連れて出ていった。
部屋に取り残された相手の女は、うつむいたままの奈乃を見る。
「奈乃、また会えるといいね」
わざと不快にさせるような言い方をした女は、やつらを追いかけるように部屋から出ていった。
「あんなの、ほっとけって」
快がなだめるように琥都の背中をポンポンと叩くと、
琥都は怒りをぶつけるかのように、壁を拳で一発殴った。
少しは気が済んだのか、大きく息を吐き出した琥都は壁にもたれかかる。
「……大丈夫か?奈乃」
琥都が静かに訊くと、奈乃はうつむいたまま小さくうなずいた。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
