相手の男は琥都の手を振り払うと、琥都の胸ぐらを掴んだ。
「やんのか?あ?」
男の挑発的な態度に、一瞬ニヤッと笑った琥都。
「や……やめて……」
奈乃の震える細い声を掻き消すかのように。
琥都はかけていた自分のメガネを取って床に放ると、自分の靴で思い切りメガネを踏みつけた。
「相手してやるよ」
普段の優しい琥都からは想像もつかない行動に、俺は驚きを隠せない。
「やめとけって!」
慌てて快は間に入り、双方の体を突っぱねた。
「琥都っ!おまえはもう、昔のおまえじゃないだろっ」
快の言った意味が、俺には理解できなかった。
昔のおまえじゃないって……どういうことだ?
相手を睨みつける琥都の殺気立った目。
こんな琥都、初めて見る。
「ここでケンカなんかしたって何も意味ないだろ?おまえらも早く出てけって」
快は相手に部屋を出ていくよう促すけど、男は全く聞く耳を持たない。
「ほら、かかってこいよ?」
男は琥都を挑発して楽しんでいるようにさえ見える。
頭にきた俺は、男の胸ぐらを掴んだ。
「いいかげんにしろよ」
俺が男に殴りかかろうとしたそのとき、後ろから声が聞こえた。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
