頭が真っ白になって、何も考えられなかった。
心臓が止まったみたいに、息もできなくて。
だけど、唇に触れる感触は確かにあって……。
「……っ」
重なっていた唇がそっと離れると、
目を閉じていた湊は、ゆっくりと目を開く。
湊の瞳を見た瞬間、あたしの胸はもう一度動き始めた気がした。
あたしの頬を伝う涙を、湊は親指で拭う。
「湊……」
「ん……?」
「いま、キスした……?」
湊は黙り込んであたしの顔を見つめる。
「なんでキスしたの……?」
あたしが訊くと、湊は視線を逸らした。
「聞くなよ」
「き、聞くに決まってるでしょーがっ」
「……俺から言うつもりだったのに」
「え……?」
湊は少し照れたような様子で言った。
「おまえが先に言うなよ。つか、おまえいつから俺のこと?全然そんな素振りねぇし」
「だって……必死に隠してたもん。湊、女嫌いだし……」
「まぁな」
「あたしのこと、女の子として見てくれないって思ってた」
「あーあ。人生でたったひとりの女に心を捧げるとはな」
「イヤ?」
「べつに」
優しく微笑む湊は、あたしの頬をキュッとつねる。
「うっ……うぇぇぇ―――んっ」
「また泣くのかよ?」
「だって……ううっ……あたしが……あたしが……どれだけ悩んだと思ってんのよぉ!」
傷つくのが怖くて。嫌われたくなくて。
いままでの関係を壊せなかった。
気持ちはどんどん大きくなるのに。
好きだって、ずっと……言えなくて……。
「叶わない恋だって思ってた。あたしたち一生、幼なじみのままなんだって……」
「おまえこそ、いままで年上しか好きにならなかったくせに」
「なんでこんな性格悪くて、冷たくて悪魔みたいなやつ……好きになっちゃったんだろ……」
「おい」
「ふふっ」
「泣くか笑うかどっちかにしろ」
つねっていた頬を
今度は優しく親指で撫でると
湊はあたしのおでこに、キスを落とした。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
