「ちがうよぉ!」
「ちげぇの?抱き合ってたくせに」
「あれは、にっくんが……」
湊と視線がぶつかり、あたしはうつむく。
「それより……いつからあたし湊のモノになったの?」
「あ?」
「さっき言ったじゃん。“俺の結雨に触んな”って」
いまあたし、ニヤケてないよね?大丈夫だよね?
「……言ってねぇし」
「言ってたし!」
「それは……だから、あれだよ。学校では一応おまえの彼氏なわけだし、なんつーか……」
あぁ、そっか。そうだよね。
学校では彼氏のフリしてるから、だからあんなこと言ったんだ。
なのに素直に浮かれて、あたしってば、バカみたい。
湊があたしのこと好きなわけないのに。
そんな心にもない一言で、バカみたいに喜んで、ひとりでうれしくなって……。
こんなこと、いつまで続けていくんだろう。
本当の気持ち隠して、好きって言えなくて。
うれしくなったり、悲しくなって落ち込んだり。
いつまで繰り返すのかな。
湊への気持ち、どうしたら消えるの?
どうしたら好きじゃなくなる?
胸が苦しくなって、涙があふれてくる……。
もぉ……やだ……。
「俺もう部活行くから」
あたしをその場に残して、歩いていく湊の後ろ姿を見つめた。
我慢できなかった。
瞳に溢れる涙が、頬を伝ってこぼれ落ちていく。
湊が教室のドアに手をかけた瞬間、
「湊……っ」
思わず呼び止めてしまったあたしは、後ろから勢いよく湊に抱きついた。
涙が止まらなかった。
いつからあたしは、こんなに泣き虫になったんだろう。
好きな気持ちが
大きくなればなるほど、泣きたくてどうしようもなかった。
「……結雨?」
頭ではわかってる。
言っちゃダメって。伝えちゃいけないって。
好きって言ったら、湊に嫌われるかもしれない。
いままでどおりの関係ではいられなくなる。
すべてを壊すことになる。
頭ではわかってるつもりなのに。
心が……ついていかない。
「好きになっちゃったの……」
自分じゃどうしようもないくらい、好きなの。
涙が止まらないくらい、好きなの。
「湊のことが……好き……」


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
