そのとき、教室のドアのほうから大きな声が聞こえた。
「二階堂っ!」
にっくんに抱きしめられたまま顔だけ振り向くと、
教室のドアの前で、息を切らしている湊がいた。
「湊っ!?」
あたしが驚いたような声を出すと、
湊はにっくんの顔を見て、一瞬キョトンとした顔をした。
「あれ?二階堂じゃねぇし……」
にっくんは、湊にニコッと微笑む。
「なんで湊がここに?部活じゃないの?」
あたしが訊くと、湊は目を細めてこっちを睨んだ。
「おまえらこそ、教室で何してんだよ?」
「えっと、湊……これは……」
なんでこんなときに現れるわけ?
この状況、どう見ても誤解されちゃう。
にっくんとは何でもないのに。
最悪なタイミングだ。
「誰もいねぇ教室で何しようとしてた?」
「ち、ちがうの、湊……」
にっくんも、なんか言ってよぉ。
なんで黙ってるの?
湊に誤解されちゃう。
冷めた眼差しでこっちに近づいてきた湊は、にっくんの肩を掴んだ。
「離せよ」
湊は、にっくんを睨みつけた。
「……やだって言ったら?」
に、に、にっくん!?
いま、ふざけてる場合じゃないんですが!
「触んな」
にっくんとあたしの体を無理やり離した湊は、あたしの手を掴むとグイッと引っ張り、あたしを背中の後ろに隠した。
「俺の結雨に触んなっ」


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
