どうして……?
別れたあの日。
“追いかけないよ?俺”
そう言ったくせに……。
どうしていまさら、そんなこと言うの?
「先輩も知ってる通り、あたしはいま湊の彼女なんです。先輩だって、あの人と……」
「深珠とはもう、終わったから」
終わったって何が……?
「……離して、先輩」
先輩はゆっくりとあたしの体を離すと、あたしの顔を見つめた。
先輩の右手がそっとあたしの頬に触れる。
「中学の頃、深珠と付き合ってた」
先輩は静かに話し始めた。
「深珠と別れたあと、忘れたくて他の女の子と何人か付き合った。でも深珠のこと忘れられなかったんだ」
先輩は、あたしのことなんて。
最初から好きじゃなかったんだね。
だからあんな裏切りも、平気な顔して出来たんだ。
先輩が好きだったのは、ずっと前から来瞳先輩だったから。
あたしにとっては幸せな思い出もあったけど、それも全部、全部……ウソだったんだね。
「それなら来瞳先輩とヨリ戻せばいいでしょ?どうして……」
「最初から深珠は、俺のこと何とも思ってないから」
二階堂先輩の片想いだったってこと……?
「深珠は寂しいとき、誰かがそばにいてくれれば……俺じゃなくてもよかったんだよ」
それをわかっていても、忘れられないくらい。
それくらい来瞳先輩のことが好きなのに。
「先輩も同じでしょ?あたしじゃなくても誰でもよかった」
「最初は結雨のこと、可愛いなって……軽い気持ちだった」
「どうしてあたしとやり直したいなんて言うの?来瞳先輩が好きなのに。あたしのこと何だと思って……」
「結雨、聞いて」
ずるいよ。
何でそうやって
切ない瞳で、あたしをまっすぐ見つめるの?
どうしてそんなに優しく触れるの?
あたしはそうやって、いつだって。
先輩の魅力に翻弄されていたんだ。
「勝手だってわかってる」
先輩は目を伏せて呟く。
「自分でも、こうなるなんて思ってなかった」
先輩は、あたしの頬を優しく撫でながら言った。
「結雨と別れて……初めて本当の気持ちに気づいた」


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
