「行きたいなら行けよ」
「湊……」
俺は廊下の壁に右手をつき、結雨の前に立ちはだかった。
「……俺が引き止めんのは、これが最後だ」
少しの間、黙り込んで見つめ合う俺たち。
先に口を開いたのは、結雨だった。
「……通して?湊」
「行くなら行け」
俺を退けて行けよ……。
何か言いたげな結雨の瞳。
「…………」
なんで引き止めるのか、そう言っているかのような瞳だった。
結雨の復讐は、失敗に終わる……そんな予感がした。
いまの二階堂の気持ちを知ったら、
結雨はきっと、アイツのとこに戻るはずだから。
行かせたくねぇって……思った。
ここで結雨がアイツのとこに行ったら、
アイツは、結雨を離さないだろう。
復讐が失敗に終わるのと同時に、俺たちの関係も終わる……。
ヒミツだった偽物カップルは、
ただの幼なじみに戻るんだ。
「湊」
結雨は、壁についた俺の右腕を掴み、そっと下におろした。
「……行ってくるね」
静かにつぶやいた結雨は、俺の横を通り過ぎ、そのまま家を出ていった。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
