二階堂が、結雨に本気……?
前に、結雨にブレスレットを渡した二階堂の言葉を思い出す……。
“結雨に手錠かけたくて”
本気になり始めてる?
いまさら、ふざけんな。
「私と別れてから初めて……理央は他の女の子に本気で恋しようとしてる……」
「あんたは、いつ二階堂のこと好きになったんだよ?最初は寂しかっただけなんだろ?」
「理央の心変わりに気づいたとき、自分の気持ちに気づいた」
つまり、二階堂は結雨を失ってから自分の本当の気持ちに気づいて。
コイツもまた、二階堂の気持ちが自分から離れたことで、自分の気持ちに気づいたってことかよ。
「めんどくせぇことやってんじゃねーよ」
結雨への嫌がらせは、二階堂の心変わりに気づいたときから始まったのか。
「大切なものは失ってから気づくって、こういうことだな」
「……あの子がキライなの。ホント、消えて欲しい」
「結雨は何も悪くねぇじゃん。八つ当たりしてんじゃねーよっ」
「あの子が笑ってるだけで、ムカつくの。キライなんだもん。しょーがないじゃないっ」
なんとも理不尽な言い分に、俺は声を荒げる。
「キライな人間には何してもいいのかよ?傷つけてもいいのかよっ!ざけんなっ」
俺は、強く拳を握りしめる。
「いままでどんな人生歩いてきたんだよ?何でも自分の思い通りになんなきゃ、そうやって誰かを傷つけてきたのか?」
「フッ……」
「笑うとこじゃねーけど」
「なにキレイごと言ってんの?みんな自分がいちばん大切に決まってんじゃん」
「自分が大切だからって、人のこと傷つけていい理由になんねぇだろ」
「誰に向かって説教してんの?」
先輩は俺の胸ぐらを掴んで、下から睨みつけてくる。
「あんたは自分のことしか考えてねぇんだよ」
「だからさぁ、さっきから言ってるじゃない。みんな自分が大切なの」
「自分を大切にするって、自分と関わる人間も大切にするってことじゃねーのかよっ」
「……どんだけ純粋なわけ?朝霧くんに私の気持ちなんかわかるわけないっ」
「わかんねーよ。わかりたくもねーよっ」
「あの子のこと……ちゃんとつかまえててよ……」
目を伏せて先輩はつぶやいた。
「理央が本気出したら、あの子……絶対に揺れる」
「アホか。結雨はいま俺の彼女なんだよ。あんたも知ってんだろ」
「あの子……理央と私の関係を知って別れたんでしょ?朝霧くんのこと、あの子が本気で好きだとでも思う?」
「なにが言いたい?」
「昔の私と同じだと思うよ?あの子だって理央と別れて寂しいから、朝霧くんと付き合ったんでしょ?」
わかってるよ。
俺は結雨の復讐に利用されてるだけだよ。
「理央だって、それくらいわかってる。だからきっと、あの子のこと簡単にあきらめない」
「関係ねぇよ。結雨はアイツのとこ戻る気なんてもう……ねぇんだから」
結雨の強がりだと知ってたけど、それでも信じていた。
アイツのところには戻らないと。
もう二度と。戻らないって……。
――バンッ。
俺は先輩の肩を掴み、先輩の体を壁に打ち付けた。
「よく聞け。今後もし結雨に何かしたら、ぜってぇ許さねぇから」
先輩の、最後まで強気な態度は変わらなかった。
「ごめんね?約束はしない主義なの」
「そーか、わかった。だったら……」
俺は少しかがんで、先輩に目線を合わせる。
「なぁに?理央に告げ口でもするつもり?そんなことしたら……」
「しねぇよ」
「え?」
結雨のことは
何が何でも
「俺が守ってみせる」
先輩の顔の横で壁をバンッと叩いた俺は、
そこに先輩を残して、先に生徒会室を出て行った。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
