「結雨に何の恨みがあんだよ?」
結雨の上履きをその場に落として逃げようとした来瞳先輩の腕を、俺は咄嗟に掴む。
「逃がすわけねぇだろーが」
「離してっ」
「じゃあ言えっ!なんでこんなことすんだよっ」
「……逃げてもムダよね」
そう呟くと、来瞳先輩は俺から顔を背けた。
俺が掴んでいた腕を離した瞬間、来瞳先輩はその場から逃げ出す。
「はぁ?ふざけっ……」
逃げてもムダだって、わかんねーのか?
すぐにあとを追いかけようとしたそのとき、
「湊くんっ」
背後から奈乃が駆けよってきた。
「なにこれ……ひどい。結雨ちゃんの上履きがぁ……」
奈乃は、ハサミで切り刻まれた結雨の上履きを拾い、胸の前で抱えた。
「なぁ、奈乃」
俺は制服のポケットから財布を取り出し、5千円札を奈乃に渡す。
「そこの文房具屋で、結雨の新しい上履き買っといてくんね?」
「わかった。結雨ちゃんが登校してくるまえに新しいの入れとく。湊くんは早くあの人のこと追いかけてっ」
「頼んだ」
俺は、来瞳先輩のあとを追って、階段を駆けあがっていく。
「あのやろ……どこに逃げた?」
俺は息を切らしながら走り、校内を探し回る。
ぜってぇ、許さねぇ。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
